Electromagnetics and Ham Radio
Experiment 10
インダクタンスの測定に当たり問題にしなければならないのが位相(θS)です。 直列等価で位相が-π/4近くであればLS=XS/ωは真のインダクタンスに近いことになります。 なぜかというとRS=ほぼ 0になっていることを意味しています。 今回のインダクタンスの測定では、周波数を変化させ位相(θS)が -π/4近く値をピックアップしています。

最近の測定器は、自動でモードを判断しインダクタンスを表示してくれます。 今回の実験では、自動モード、直列等価回路モード(2台)、並列等価回路モード、共振でのL測定の5つの測定器を使いました。 主にクリップ先端でキャリブレーションが出来る自動モード測定器を使い、残りの4台で結果の確認を行いました。
並列等価回路モードの測定器は、RPとXPを出力してくれます。 それらをベースにQ、LS、RS、XSは以下の式で計算できます。

\begin{eqnarray} Q=\frac{R_P}{X_P} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} R_S=R_P\frac{1}{1+Q^2} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} X_S=X_P\frac{Q^2}{1+Q^2} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} L_S=\frac{X_S}{ω} \end{eqnarray}

直列等価回路モードの測定器は、RSとXSを出力してくれます。 それらをベースにQ、LP、RP、XPは以下の式で計算できます。

\begin{eqnarray} Q=\frac{X_S}{R_S} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} R_P=R_S(1+Q^2) \end{eqnarray} \begin{eqnarray} X_P=X_S\frac{1+Q^2}{Q^2} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} L_P=\frac{X_P}{ω} \end{eqnarray}

上式で得られた数値群を見て、どのモードが正しい選択だったかを判断できると思います。判断を間違えると正しいインダクタンスを得ることはできません。
ところで、上の式はどうやって導き出されているかですが、例えば並列等価回路の式を直列等価回路の形に変形できれば、並列から直接への変換式がえられます。 つまり、並列等価回路を直列等価回路に置き換えたらRSはRPとXPで書けます。 抵抗を直列につないだときの直列等価回路の式はZ=RS+jXSですが、 抵抗を並列につないだ時の式は以下の左になります。 そして、ちょっと計算を進めると以下の右になります。

\begin{eqnarray}\frac{1}{Z} =\frac{1}{R_P}+\frac{1}{jX_P}\end{eqnarray} \begin{eqnarray}Z =\frac{jR_PX_P}{R_P+jX_P}\end{eqnarray}

上の右側の式に対し、右辺の分子と分母に (RP-jXP) 乗じて整理すると以下の式が出来上がります。 複素数の演算ですがjj=-1です。 ある複素数Aに別の複素数Bをかけると複素数ABは、複素平面で回転します。 例えば、A=jでB=jだった場合、Aは複素平面の虚数軸(縦軸の+側)上にあり長さ1のベクトルです。 そしてAにBをかけると90度反時計方向に回転します。つまり、AB=jjは実数軸(横軸)の-1を向いたベクトルになります。 余談ですが、この複素数という数学的ルールを使うと、様々な偏微分方程式を数値的にスマートかつ効率的に解くことができます。

\begin{eqnarray} Z =R_P\frac{X_P^2}{R_P^2+X_P^2}+jX_P\frac{R_P^2}{R_P^2+X_P^2} \end{eqnarray}

上の式は、直列等価回路の式( Z=RS+jXS )になっています。つまり、以下の変換式がえられたことになります。

\begin{eqnarray} R_S =R_P\frac{X_P^2}{R_P^2+X_P^2} \end{eqnarray} \begin{eqnarray} X_S =X_P\frac{R_P^2}{R_P^2+X_P^2} \end{eqnarray}

Q=RP/XPで整理すると、上で紹介した並列等価回路と直列等価回路間の変換式が得られます。 また、直列等価の位相はθS=arctan(Q)で計算できます。

キャパシタンスについても以下の関係式が考えられます。ここで行っている実験では、キャパシタンスのQは高くCS=CPの関係にあります。

\begin{eqnarray} C_S=C_P\frac{1+Q^2}{Q^2} \end{eqnarray}


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