■LSとLPと測定器■
LCR測定器は、測定対象物(L or C)に対し交流を与え電圧と電流の測定からインピーダンス(Z)を計算し、 位相(θ)の測定を行うことにより、インピーダンス(Z=V/I=R+jX)をRとXに分解しています。 ブリッジを使った測定器では、RとXをほぼ直接的に測定できるものもあります。ここでは話をLに限定して進めます。 LCR測定器を使う上で問題になるのが測定対象物のLには抵抗成分が含まれていて、それが並列になっているのか直列になっているのかです。 直列の場合を直列等価回路、並列の場合を並列等価回路になっていると仮定して測定値のZとθからRとXを計算しなければなりません。 直列の場合は Z=RS+jXS となり、並列の場合は 1/Z=1/RP+1/(jXP) になります。 インダクタンス(L)を精度よく測定するに当たっては、直列等価回路モードをとるか並列等価回路モードをとるか判断しなければなりません。 一般にLのインピーダンス(ωL)が低い場合(RS cannot be ignored)は直列等価回路モード(LS測定)で、 インピーダンス(ωL)が高い場合(RS can be ignored)は並列等価回路モード(LP測定)で測定します。 最近の測定器は、自動でモードを判断しインダクタンスを表示してくれます。 並列等価回路と直列等価回路が考えられるということは、元々下図のように2つの抵抗がインダクターに有り、条件により1つの抵抗が無視できるということです。 インダクターを完璧に再現しようとするともっと複雑な等価回路になります。しかし、 未知数(今はXPとRPまたはXSとRSの2つ)が多くなると 測定項目も多くなり収拾がつかなくなります。 ということで、実際のインダクターは、下図に示すように理想的なX(ここではXL)に抵抗RPが並列に、 そして抵抗RSが直接に接続されたようになっていると考えられます。 RPはインダクターの周辺物質(コア等の)による損失、RSはLを形成しているエレメント自身の抵抗と考えられます。 上を踏まえると、インダクターとしては抵抗RSが無視(RS nearly=0)できれば並列等価回路、 抵抗RPが無視(RP relatively=∞)できれば直列等価回路のいずれかとして取り扱うことができます。 例えばインダクターのインダクタンス(L)が小さい場合を考えます。 するとRPはLに対し相対的に大きくなり無視できますが、RSは無視できなくなり、インダクターは直列等価回路で置き換えられます。 インダクタンス(L)が大きい場合は、RSを無視できますので、並列等価回路になります。 つまり、測定されたインピーダンス(Z)が小さいと直列等価回路と仮定でき、Zが大きいと並列等価回路になります。 ここでの議論はあくまで仮定ベースですので、実際の測定対象物を観察して並列か直列かを決めなければなりません。