Study Abroad
Freshman (1976.9 - 1977.8) ..5

■Spring 1977■
冬休みの旅行から帰ってまずやらなければならないのが、コース(授業科目)の選定です。ステューデント ユニオンに行き新聞みたいなコーススケジュールを取ってきて、2つのCampuses間の移動時間を 考慮しコースを決めました。以下が、そのときの仮スケジュールです。

MTH142が微積分学2、MTH241が微積分学3、PHA107が物理1、SPA101がスペイン語1です。物理1には実験も含まれていて 報告書の提出が義務付けられています。今学期は、これらの4つの16単位を取ることにしました。 SPA101は教養科目の1つです。留学生のとって教養科目(トータルで32単位とる必要有り)の選定が難しいといえます。 英語の負荷が大きいと勉強に時間を割かなければなりません。かといってあまりにも特殊な科目をとると、 大学が教養科目として認めてくれない可能性があります。ですから、事前に教養科目の選定については、アドバイザー と十分議論しておく必要があります。中にはスカイダイビングを教養科目に認めてもらった 者もいました。物理1の授業内容は、Newtonの第1および第2の法則をベースとした力学で構成されていました。教授は インド人でした。ちょっと発音に癖がありましたが、私は問題なく授業が聞き取れました。しかし、アメリカ人は これに対して言い訳をよくします。例えば、”あの教授は何を言っているか分からない。だから俺は成績のDを もらうはめになったんだよ”とか。確かに物理の学部が入っている建物に入ると、日本人を含む東洋人とインド人 が目立ちます。これを見ればアメリカ人は文句も言いたくなると思います。しかし、これはアメリカ人が物理を 捨てたからです。話はかなり現代に来ますが、クリントンが大統領になる前、彼はアメリカの若者になりたい職業 は何かと聞いたところ、1位がヘアードレッサー、2位が写真家、そして40位が物理学者だったそうです。私の 記憶によれば技術者も20位前後だったと思います。でも、外国人にアメリカで学者や技術者になるチャンスを 与えてくれているのもアメリカ合衆国なのです。ということで、アメリカの大学には世界中から優秀な人材が 集まります。つまり、国境を越えた知能集団がアメリカの大学のレベルを世界一にしているのです。留学すると、 このことをまず感じます。日本の大学は出遅れてしまいました。 こんな話を聞いた事が有ります。日本にやって来た アジアの留学生が医学部に入り医者になりました。そして国に帰り病院に就職しようとしたら ”日本の医師免許ではだめ、アメリカの医師免許を取っておいで”と言われたそうです。日本の医学が劣って いるのでなく、日本の医学の素晴らしさをアピールしてこなかったからです。アピールするには、大勢の 留学生を受け入れる必要があるのです。と私は思うのですが、いかがですか。
ここで授業内容を簡単に紹介しておきます。MTH142では複雑な関数の微分積分と簡単な1階微分方程式 の解き方を学びます。 MTH241では、ベクトルの微分積分を学びます。ですがこれは解析学と言った方がよいかもしれません。 微分積分以外に、グリーンの定理とか発散の定理が出てきます。 PHA107は工学部および理学部の学生向けの最初の物理です。地元出身の学生に聞いた話ですが、アメリカ人 にとってこの物理と微積分学はとても難しい授業の部類に入るそうです。物理と数学で良い成績が 残せなかったために工学部へ進めなかったとよく聞きました。 SPA101は一般学生向けの最初のスペイン語です。スペイン語は、日本人にとって発音し易い単語が多く あります。それに、スペインから日本に持ち込まれた言葉はたくさんありますので、問題なく 授業に出席できると判断しスペイン語を取ることにしました。また、スペイン語の単語の80%が母音で おわるそうです。SPA101を取るとSPA102も取らないと教養科目の単位と認められないので、 次の学期にSPA102を取ることにしました。
学期が始まり意外と苦労したのがスペイン語でした。英語を勉強したときのように単語帳や 文語帳を作って、いつも見て記憶するように努力していました。次に大変だったのが物理 でした。今までに物理を真剣に勉強したことがなかったので、原理を理解するのに頭が混乱 するときがありました。そんな時は、いつも物理の知人に聞きに行っていました。 大変助かりました。数学については、そんなに苦労はしませんでしたが、試験で良い点数 を取るには毎日の勉強はかかせませんでした。何せ成績でAを取れる確率の高いのは、数学 や数学を多く使う科目ですからね。
大学で使う教科書の話をしておきましょう。まず、全ての本がぶ厚です。中を見ると長い 説明文がびっしり書いてあります。そして図が大変素晴らしく描かれています。図を見る だけでも理解が深まります。また、説明文は大変読み易いです。留学生でも問題なく解読 できます。私が記憶している高校の本は薄っぺらくて、説明文 が短く図も貧弱だったように記憶しています。
ある日の物理の授業でこんなことがありました。数式の展開の中で先生(インド人)が黒板にVDと書いた とたん教室が騒がしくなりました。先生も外国人だったので直ぐに理解できなかった様子 だったので、学生の1人が冗談で”venereal disease(性病)のことですか”と言ってくれたので 理解したみたいです。その後は、VDでなくDVと書くようにしていました。
またある日のスペイン語の授業で、数の数え方の勉強をしていました。先生が85といったとたん 私だけだと思いますが、笑いを堪え切れなくなりました。85はオッチェンタイシンコと 発音します。しかし、彼らが言うとどうしても”オッタンタチンコ”に聞こえるのです。 こまったもんです。
またまたある日のMTH241の授業で先生が数式の展開をやっていて、”これが最終結果に なります”と言いながら黒板にy(t) = (2a/3 + 4b/7)exp(ht) と書きました。 そして、あるアメリカ人の学生が”先生それもっと簡単になりますよ”言いながら ”y(t) = (2a+4b)/(3 + 7)exp(ht) と書けるでしょう?”と言うのです。先生が、 ”どうしてそれは正しいと言えるの”と聞くとその学生は”分子と分母をそれぞれ足せば よいでしょう”と言ったので、先生は真面目な顔で”それはちょっと無理があるね” と言っていました。私は、微分方程式を受けている学生のレベルはこの程度かと びっくりしました。とにかくアメリカ人は教室で頻繁に質問をします。しかし、その 殆どが”まぬけ”な質問です。かれらは、Hey, that's a stupid question! Come on!とか ヤジが飛びます。
MTH142ですがアメリカ人のIさんと同じクラスになりました。彼女は、数学が苦手のようで 授業についてゆくのが大変そうでした。授業が終わるといつも私のところに来て”今日の 授業の内容を復習したい、いいい”と言っていました。何回説明しても理解してない ようでした。彼女は高校をトップで卒業したと言っていましたが、彼女には微積分学は 難しかったのですかね。このとき私は、アメリカの場合、高校と大学の教育 レベルに大きな開きがあるのではないかと思っていました。日本の場合、微積分学の初級レベル は高校で教えますよね。 ということで彼女は数学で悪戦苦闘していたようです。そして中間試験が有り、私は15分で全ての 問題を解いたのですが、彼女はどうだったのか何も言ってくれませんでした。多分、 悲惨な状況だったのではないかと思いました。

学期が始まって一ヶ月程すると、授業料の請求書が届きます。今回は 授業料が600ドルになっています。前期は800ドルでしたのに。正規の学生になる安くなるのですかね。

BACK NEXT
Menu English U1 U2 U3 U4 M1 M2 PhD@UA PhD1@UB PhD2@UB PhD3@UB PhD4@UB PostDr